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  【年収の中で大きな存在の「賞与」】
 「賞与」とは、文字どおり「賞め与える」ものだから本来は生活給の要素はないのですが、実際には戦後の賃金を見るとき、労使交渉では「一時金」といった呼び名のもとで、生活保障の目的が色濃くでていました。
 現在でも、社員の採用などで給与の希望欄に、例えば「月収35万円、年収500万円」などと記入されているようです。これは、月収の合計金額を年収から差し引いた分は賞与を当てにしているわけで、正確には「年収○○○万円」と計算したほうがよいでしょう。つまり、賞与は現に年収の中にデンと腰を下ろしていることに間違いはありません。
 しかし、現在の平成の構造不況のただ中にあって、基本給ですらベアはおろか定期昇給も上昇できない企業が多い状況である以上、企業はまず法律に支払義務のない賞与に真っ先に着目して、やむなく賞与の減額支給、あるいは不支給といった企業もでているのが現状といえます。
【賞与は社員のヤル気を起こす】
 今、退職金ですら制度の見直し、中には、賃金による前払いをはじめ退職金そのものの必要性を考え直そうという企業もあるほどです。ところが、この退職金にしても賞与にしてもそれなりのプラスの面があることはいうまでもありません。

<賞与の長所>
 ・社員のヤル気を起こすのに役立つ。
<退職金の長所>
 ・社員の定着をよくする。

 この退職金にしても賞与にしても、我が国では諸外国に比べて相当の重みと意味を持って支給されてきたのが事実であり、そのことが日本の著しい経済成長の下支えとなってきたことも間違いないのです。

【賞与の不支給は社員に危機感と不安を与える?】
 そこでこの賞与についていえば、賞与不支給になったときの社員の危機感と不安は、まず計り知れないものがあります。「危ないのか」あるいは「もしかしたら」と、自社の存続を念頭に浮き足立つのが普通といえるでしょう。ときには、ショック療法的な効果を期待して、社内のたるんだ空気を引き締める場合もあると思われますが、大体はヤル気を失わせることの方が多いのではないでしょうか。
【厳しい時代の賞与の支払い方】
 そこで賞与は、できるだけ支給した方がよいのは当然ですが、経営環境が厳しい状況では、原資が少ない企業が大半ではないでしょうか。したがって問題となるのは、その支給方法です。ポイントは次のとおりです。
<ポイント1> 年功序列など今までのやり方を見直す
 まず、「年功序列」型の発想を見直すことが必要です。つまり賞与は「生活保障、勤続、年齢」などの要素ではなく、「能力、成果の反映」部分を反映させるべきではないでしょうか。
 例えば、生活費など生活を維持していく固定部分と企業業績に連動した変動部分を組み合わせた方法が考えられます。業績連動型の賞与について具体的に
検討しましょう。この場合、月次決算や部門別業績管理などを取り入れることが前提となります。
<ポイント2> 社長の姿勢と気持ちを社員に示す
 社員の納得を得ることが必要です。次のような事例があります。
【経営内容を示して社員の理解を得たA社】
 経営状態が思わしくなく、賞与の支給も危うかったとき、A社長は社員を集めて「今期は業績が厳しいため、夏冬の賞与は支給できそうもない。決算終了後に利益が出た
場合にその分を決算賞与として全員に支給するから、頑張って欲しい」と、自社の経営内容等を示して訴えた。これには、社員も納得して、利益を出すために、また会社
の将来も考えて働いた。結果、利益を出すことができ決算賞与を支給できたという。また社員の頑張りから業績も上向きになりつつあったため、翌年からは、従来の夏冬型の賞与に戻した。

【少ない原資から支給してヤル気を起こさせたB社】
 B社は業績が低迷し、賞与の支給原資がほとんどなかった。しかしB社長は「賞与を支払えないのでは、社員に申し訳ない」と考え、社長の報酬を減額するなど何とかやりくりし、少額ではあったが成果に応じて支給した。賞与は出ないと思っていた社員は、社長の思いに感激し、ヤル気を起こし業績も徐々によくなりつつあるという。

 賞与の原資が確保しにくい厳しい時代ではありますが、このように経営者の姿勢や賞与の支給方法によっては、社員のヤル気もずいぶん違ってくるようです。

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