今やパート労働者は1,200万人を超え、全雇用者の22.5%、5人に1人の割合となっています。
このパート労働者に対する適切な労働条件等を規定する「パートタイム労働法」(短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律)が改正され、通常の労働者との待遇格差是正等が盛り込まれました。施行は来年4月からで、主な改正点等は以下のとおりです。
※「パート労働者」とは、フルタイム労働者と対比して、1週間の所定労働時間がその職場で働く通常の労働者よりも短い人をいうのであって、職務内容とは関係ありません。※「パート労働者」とは、フルタイム労働者と対比して、1週間の所定労働時間がその職場で働く通常の労働者よりも短い人をいうのであって、職務内容とは関係ありません。
パート労働者は、個々に労働条件が異なる場合が多いので、個別に雇用契約書を定めて交付し、労働条件を明示して説明することが義務づけられました。 具体的には、雇入通知書にあるように労働基準法上の主要な義務、例えば雇用期間や所定労働時間、時間外休日労働の有無、休日、休憩、有給休暇などをはじめ賃金、昇給、退職金や賞与の有無などについて文書を交付、説明しなければなりません。 なお従来は雇用主の努力義務でしたが、今回の改正によって義務化され、違反の場合は10万円の過料に処せられます。
全てのパート労働者について職務内容、職務成果、意欲、能力、経験などのいずれかを考慮して待遇の均衡をとるよう努力することが義務づけられました。特に通常の労働者と同じ職務のパート労働者について、また一定の期間は通常の労働者と同じ範囲の職務の内容、配置が見込まれるパート労働者については、賃金の決定方法を通常の労働者と同一にするよう努力しなければなりません。例えば以下のようなことが考えられます。
・同じ職務にあるにもかかわらず、通常の労働者の基本給が職能給であるのにパート労働者は一律の時給であるような場合に、賃金の決定方法を職能給にする。
・熟練を要する職務に専念する人と単純労働についている人との間の賃金に多少の差をつける。
・新入社員とベテランとの間に経験の差を考慮する。など
業務に必要な最低限の教育訓練を、通常の労働者と同じ職務に従事するパート労働者に対しても実施することが義務づけられました。また、ステップアップのための教育訓練を職務の内容など実態に応じて実施することが望ましいとされました。 なお、これらは雇用主の努力義務ですが、パート労働者の労働条件向上や正社員化について道筋をつける意味で大切でしょう。
業務の遂行に直接関係ある施設について、通常の社員と同様にパート労働者に対しても利用する機会を与える配慮をすることが義務づけられました。例えば以下のようなことは好ましくありません。
・正社員だけが社員食堂を利用したり、更衣室も正社員しか使えない。
・休憩室は正社員専用でパート労働者は使えない。
ただし慶弔見舞金などは業務に直接関連しないので、この場合の均衡待遇には該当しません。
通常の労働者と同様の働き方をしていると見られるパート労働者については、短期間労働者であること理由として差別的取扱いをしてはいけません。具体例としては、以下のようなことが考えられます。
・まず基本給があり、正社員が1時間当たり1,000円の月給制であるのに、同様の働きをしているパート労働者は時給850円であるような場合は、パート労働者も1時間当たり1,000円の月給制に改善します。
ただし能力や経験、成果などで差が生ずることはあり得ます。また賞与について正社員だけに支給されているとすれば、これも改善しなければなりません。
*差別的取扱い禁止の対象となるパート労働者には、雇用契約の更新を繰り返して雇用期間の定めのない雇用とみなされるパート労働者等も含まれます。
パート労働者の中には、フルタイマーを希望している者も少なくありません。そこで、短時間労働を固定化してしまうのではなく、パート労働者を通常の労働者に転換できる機会を作らなければなりません。具体的には以下のようなことが考えられます。
・通常の労働者を募集する際、社内公募の場合、パート労働者に対してその応募の機会を与える。
・社外から通常の労働者を募集する場合、募集の情報を周知する。
・一定の資格を有するパート労働者を対象として試験制度を設ける。など
今回の改正によって義務化された「雇用契約書の交付」「待遇に関する説明」「差別的取扱いの禁止」「教育訓練の実施」「福利厚生施設の利用」「転換の推進」などについての苦情処理は、
都道府県の紛争調整委員会の調停に委ねられます。また「職務の内容、成果などを勘案した賃金の決定」「ステップアップ教育訓練」「苦情の自主的解決」などは努力義務とされ、
これらの苦情処理に関しては都道府県労働局長による助言・指導・勧告がなされます。なお、苦情に対する最終的な対処は民事訴訟によって解決されることになります。新しいパートタイム労働法を踏まえて、自社のパート社員の規定の見直しを検討してみてはいかがでしょうか?