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  【ますます複雑化する会計処理基準】
 国際会計基準の流れから、公開会社を対象に税効果会計などが次々と導入されています。ますます複雑化する会計処理基準の中で、商法の規定に基づいて、中小企業にも大会社と同じ会計処理をさせることは、実務上、過重な負担を強いるのではないかといわれています。
 こうした状況の中で大企業とは企業体質を異にする中小企業に合った会計基準が必要だという議論が生まれています。つまり大人には大人の洋服、子供には子供の洋服というように、それぞれの体格にあった洋服が必要ではないかという議論がなされています。
  【中小企業庁が公表した「中小企業の会計」】
 中小企業庁は、「中小企業の会計に関する研究会報告書」において、取引先拡大や資金調達の多様化を目指す中小企業にとっての信頼を得られる望ましい会計のあり方を公表しています。(表1参照)
  【適正な記帳を重要視】
 報告書の中で注目されるのは、「中小企業の会計」(表1)で、「記帳は、整然かつ明瞭に、正確かつ網羅的に行わなければならない。また記帳は、適時に行わなければならない」とされたことです。
・「正確かつ網羅的に」とは
 事実を歪めることなく、記録すべきことについて余すところなく記帳をするという
 ことです。
・「適時に行わなければならない」とは
 記録すべきことが起こったら速やかに記帳するということです。つまり記帳が遅れれば、間違う可能性が高くなるので、日々記帳することが重要となるのです。
 日々の帳簿付けを軽視したばかりに、取引先等から信頼を失った企業があります。
【事例】 A社では、日々の帳簿付けが面倒なため、月末などにまとめて記帳していた。ところが、記載すべき取引が漏れてしまうということもしばしばあり、得意先に二重請求したりして信頼を失い取引の縮小を余儀なくされた。また、金融機関から試算表の提示要請を受けてもすぐ出せず、信用を失い、融資を受けることもできなくなった。
 こうした事例に限らず、そもそも中小企業には外部監査が義務づけられていないため、経営の確かさを自ら示すには、正確な適時の記帳が必要となってきます。

 日々誠実に記帳した帳簿には、証拠能力があります。さらに正しい記帳に基づく月次決算によって、正確な経営データが入手でき、正確な経営判断が可能になります。
 つまり適正な記帳は、企業発展のポイントといえるのではないでしょうか。
 <表1:「中小企業の会計」本文より抜粋>
 〔目的〕 資金調達先の多様化や取引先の拡大を目指す中小企業が、商法上の計算書類を作成するに際して準拠することが望ましい会計のあり方を明らかにする。
 〔対象となる会社〕 商法特例法上の小会社(資本金の額が1億円以下の株式会社)で株式の公開を当面目指していない会社を対象とする。公開会社、商法特例法上の大会社の子会社は対象外とする。
 〔判断の枠組み〕 中小企業の会計を考えるに当たっては、商法の目的や趣旨のもと、以下の判断枠組みを基本とするものとする。
@計算書類の利用者、特に債権者、取引先にとって有用な
 情報を表すこと。
A経営者にとって理解しやすいものであるとともに、それに
 基づいて作成される計算書類が自社の経営状況の把握に
 役立つこと。
B対象となる会社の過重負担にならないこと。(現実に実行
 可能であること)
C現行の実務に配慮したものであること。
D会計処理の方法について、会社の環境や業態に応じた、
 選択の幅を有するものであること。簡便な方法で代替可能
 な場合、その選択が認められること。
 〔中小企業の計算書類
 作成の基本的考え方〕
中小企業の計算書類は、会社債権者や取引先をはじめとする計算書類の利用者にとって必要十分な程度に、会社の財政状態および経営成績について真実の概観を示すものでなければならない。
 (以下省略)
 〔記帳の基本的考え方〕会計帳簿の信頼性の確保のため、信頼性ある記帳が重要である。記帳は、整然かつ明瞭に、正確かつ網羅的に行わなければならない。
また、記帳は適時に行わなければならない。
 〔計算書類の開示の基
 本的考え方〕
計算書類は、定時株主総会の承認後、遅滞なく、商法の定めるところにより公告しなければならない。
 さらに、計算書類の利用者のニーズ等を勘案し、資金調達の多様化や取引先の拡大を図るためにも、商法上の公告として義務づけられている範囲以上の情報を積極的に開示することが望ましい。

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