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金融機関による企業格付や、建設業者が官庁の指名業者になる際の経営審査等に見られるように、経営内容の公開が求められる機会が増えています。経営者は、経営内容の公開を意識して、戦略的に決算を行うことが必要ではないでしょうか。 |
【決算書は企業を評価する通信簿】 |
Q |
そもそも決算は、なぜ行わなければならないのですか  |
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A |
3月末に決算を迎える企業は多いようです。決算は、企業の日々の営業活動の結果として、売上がどれくらいあり、経費としていくらかかり、利益がどれだけ得られたのか、それらがバランスシート上で財産状態として、どういう形で表されているのか(残っているのか)というようなことを見るために行います。
決算書はいわば企業を評価する通信簿であり、経営者の手腕を映す鏡であるといえます。したがって決算は、企業の営業活動の一年間のしめくくりとして、企業にとって重要な意味を持っているのです。 |
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【経営内容を公開し信頼を得る】 |
Q |
金融機関では、決算書を非常に重視していると聞きますが。 |
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A |
金融機関は、融資の際、決算書や月々の試算表の内容を厳しくチェックしており、決算書等はますます重要になってきています。経営内容を公開しなければ、融資も受けられないという厳しい時代になっています。そこで企業としては、「税務署に提出するため」だけでなく「自社を第三者(金融機関や取引先など)にアピールするため」にも決算を行うとの考え方をもって、積極的に経営内容を公開し信頼を得ていくべきです。
今期の決算内容が悪い場合は、その原因を究明し、それを踏まえて来期の目標を具体的に定め、その達成のための具体的行動等を細かく決めた経営計画を立てることが必要です。 |
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【経営者自らが戦略的に決算を行う】 |
Q |
そんなに重要なものなら、決算は経理や会計事務所任せにしていてはダメですね。 |
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A |
そのとおりです。最終的な数字をどのようにまとめるか、経営者の意思が決算では反映されます。したがって経営者自らが戦略的に決算を行う必要があるのです。ただしもちろん企業会計原則や商法、税法等の法律をしっかり守った上で行わなければなりません。決算では、経営者は次のことを行います。 |
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<決算で経営者のすべき事項> |
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正確に現在の数字を把握し決算の数値を予測する |
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現時点での売上や経費、利益などの数値を正確に把握し、このままであれば決算数値はどうなるのか予測します。 |
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決算方針を意思決定する |
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来期以降の中長期経営計画をにらみながら、いろいろシュミレーションしてみて、今期の最終的な決算数値をどのようにまとめるか、方針を意思決定します。
企業会計原則や法律の範囲内で、合法的に利益を圧縮したり、利益を確保することは可能です。なお、決算方針をまとめるには、次のステップを踏んで行います。 |
<決算方針のまとめ方のステップ> |
ステップ1:現状の正確な把握 |
期首から現在までの自社の業績について、売上や経費、利益等の数値を正確に把握します。 |
ステップ2:未経過月の業績検討と決算数値の予測 |
現在までの実績を踏まえて決算期末までの未経過月の業績を検討し、決算数値を予測します。このとき、売上や経費、利益などいろいろな項目についてシュミレーションしてみます。 |
ステップ3:決算対策の検討 |
予測数値をもとに決算方針・対策をまとめます。例えば、予測数値をもとに節税するとか、利益を確保するなどの方針を決定し、そのための対策を検討します。 |
<利益確保対策> |
含み益のある資産の処分、役員報酬の減額、交際費の減額、経費の先送りなど |
<利益減少策> |
備品等(小額減価償却資産)の購入、修繕等の前倒し実施、不良在庫の処分、決算賞与の支給、役員退職金の支払いなど |
【自社を取り巻く関係者にも留意する】 |
Q |
決算方針をまとめる際に、注意することはありますか。 |
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A |
次のような企業を取り巻く関係者に留意しなければなりません。 |
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商品(製品)等を購入してくれる得意先 |
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得意先の取引条件や指名業者の指定条件があればそれを考慮します。 |
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材料等を提供してくれる仕入先 |
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働いてくれる従業員 |
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出資してくれる株主 |
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融資をしてくれる金融機関 |
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決算内容が悪いと融資が受けられません。金融機関がどう評価しているか自己診断をしてみましょう。 |
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国や地方公共団体などの公共機関 |
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